南瓜とマヨネーズ 2017 12/11

 

南瓜とマヨネーズ

 

監督、脚本 富永昌敬

原作  魚喃キリコ

出演 臼田あさ美、太賀 他

 

映画館 新宿シネマカリテ

 6:15〜

 

個人的点数板

81/100

(100点満点中81点)

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寒い中、すっかり日が暮れた新宿へ急ぐ。本当は家を4時に出ようと思っていたのに化粧が失敗した為に30分おくれちまった。30分の差って結構大きいよ。これ本当だから。

山手線に乗り換え、新宿駅構内を出る。いまだにね、新宿の駅構内って迷うんだよね。何であんなに複雑なの?都会の迷宮って名前に変えた方がいいと思うんだけど。

で、まあ改札にいた駅員さんに聞いてなんとか地上へ脱出。新宿の街はね、嫌いよ。きったなくて、臭くて、でもキラキラしてて、大好きだよ。

地上へ上がって数分のところにある新宿シネマカリテ。中は小綺麗。

チケットを購入して20分ほどロビーで待つ。るんるん。暇なのでTwitterとメルカリを往復。

6時になるとスタッフが客を誘導し始めて中に入る。真ん中あたりの席に座った。

何やら音楽がかかってる。女の人の声。というかこれ、作中の歌なんじゃないすか?え、いいの?なんかネタバレじゃない?

そんなこんなで、上映が始まった。

まずこの映画は「女は過去の恋をひきずらない、なんてウソ」というキャッチコピーだが、何が言いたいのかっていうと、「過去の恋を忘れて今を強がってもやっぱり強くはなれないよね」ってこと。

作品はツチダを中心に描かれている。一見キレイで自立しているように見えるけど、やっぱり女の子は、脆い。ツチダはせいちゃんを支えようと、キャバクラや風俗で働く。せいちゃんの事が大好きで、音楽やって欲しいって働いていたんだけど、せいちゃんはイマイチそれに気づいてなくて。でもツチダが願うように音楽へは貪欲だった。でもさ、そんな心がキツキツで、もう駄目だ〜!ってなった時に昔好きだった人、ハギオに再会しちゃったのが良かったのか悪かったのか。ハギオは遊び人だしさ、ああいう人って女の子の弱ってる心に入り込むのが上手いの。だから気持ちを持ってかれちゃった。やっぱり昔好きだった人はさ、一回でも好きになったらまだ気持ちはそこに残ってんだって。どんなに頭の隅に追いやってもね。

で、ハギオとちゅーしたり、ヤッたりするよね。でもふと冷静になって、「ああ、私は何をしてるんだろう。」って虚無が押し寄せる。

1番心に被さってきたのは、「普通じゃなくて良かったのに…」とツチダが泣くところ。あ、ごめん。ここで謝罪致します。もしかしたらこのセリフ、「普通じゃなくて」とは言ってなかったかもしれない。多分、言ってたけど違うかもしれない。ただニュアンス的には変わりないからね。大事なところしっかり覚えてなくてごめんよ。ちょっと、記憶力がないもんで。

話に戻ります。待たせてごめんぬ。

彼氏がそれなりに働き、彼女は家でご飯を作って待ってる。そんな普通をせいちゃんはツチダに願ってた。こんな俺じゃなくてさ、他のもっとあなたを幸せにしてくれる人がいるはずだから、そいつと幸せになってって、申し訳ない気持ちで言ったの。だけどツチダは、その「普通じゃない」を愛してた。「普通じゃない」ってのは、そんな安定した生活なんていらないよ、せいちゃんとただ平凡な幸せの毎日が欲しいだけなの。

彼氏の幸せを願うあまり、どんどん辛くなってゆく彼女と、その彼女の幸せを望む彼氏。そうね、これは2人とも幸せになりたいのに、どちらかが相手の幸せを願い、自分が不幸せになり、そして相手も不幸せになるっていう矛盾が起こってる。本末転倒なのよ。

そうそう!お話も良いんだけど、臼田あさ美さんの身体に目がいっちゃう。あ、イヤラシイ意味じゃなくて。とにかく脚が綺麗。いやもう、見ていて気持ちがいいよこりゃ。

あと、「空間」を使うのがこの作品は上手いよね。ライブハウスのドリンクカウンターの隅っこにいる2人。居酒屋のテーブルの下に縮こまる2人。狭い空間に2人を置く、そしてカメラを寄り気味で撮ることで2人の距離の近さを強調してるんだよなあ。

そんで、そんで。作中に出てくる楽曲を提供したのは、やくしまるえつこ。そう、バンド、相対性理論のボーカルの女の人。タークシー飛ばしてよクーロンからニューヨークへ♪の人だよ。こんなところでも活躍してたのね。

またまた話がズレましたね。ん、いやズレてないか。一応この映画に関係ある事だもんね!許してけろけろ。

はい。お話に戻るけれども、この作品のね、ツチダとせいちゃんの重さを天秤で表すと分かりやすいと思うんだ。ツチダが一見、せいちゃんを上へ引っ張っているように見えるんだけど実は、2人とも同じ高さにいて釣り合ってるの。

だけどきちんと釣り合ってるわけじゃない。2人とも下に垂れてるの。天秤の下に。2人ともバランスをとりあって、落ちないように、落ちないようにってしてる。そうやって保ってる。少しでもそこに重みを加えたらどちらかが下に落ちてしまう。

んで、ツチダのところにハギオっていう重りが乗っかったの。ほら、そしたらバランスが取れなくなって下にさがっちゃったでしょ。

最後、ハギオとの関係を断ち、せいちゃんとの同棲もやめる。せいちゃん、出て行っちゃったからね。今は実家にいるみたい。

ハギオとの関係を断ち、せいちゃんとも別々に住む事になった今。何もかも全てなくなり、何もない生活に戻った。だけど、何もない日常にある、ぼんやりとした何か。

「次、ライブあるのはいつ?」「2月だよ。」
歩きながら話すツチダとせいちゃんの2人。

ツチダはまたせいちゃんのライブに行くでしょう。

「ぼんやりとした何か」とは、過去を燃やして出てきた、未来への残りかす。

そんな未来への残りかすを程よい虚無感が包んでこの物語は終わったよ。